糖尿病について③

 以前のブログに書いた通り、糖尿病自体の症状は自覚が難しいです。ですが、血糖の高いままに放置しておくと様々な深刻な合併症を引き起こします。筆者としましても、糖尿病は最も恐ろしい病気の一つであると考えております。主な合併症について書いていこうと思うので、糖尿病の危険性喚起の一端を担えれば幸いです。

「三大合併症」

 糖尿病には三大合併症と呼ばれている合併症があります。「神経障害」、「網膜症」、「腎症」の3つです。神経の「し」、網膜は眼の一部であることから「め」、腎の「じ」、合わせて「しめじ」と覚えた医療系の学生は多いのではないでしょうか。

「神経障害」

 一概に神経障害といいますが、その症状は様々です。手足のしびれや痛み、感覚の鈍麻、下痢、便秘、たちくらみ、排尿障害、勃起障害etc…多種多様な症状があります。

 神経は大別すると、脳と精髄からなる「中枢神経」とその他の「末梢神経」に分類されますが、高血糖により障害されるのは末梢神経になります。体内に余分なブドウ糖がたまると、神経細胞の中にソルビトールというブドウ糖の代謝物が蓄積します。このソルビトールの蓄積が神経を障害してしまいます。

 神経障害は軽症であれば、血糖コントロールによって改善することが可能です。中等度以上の症状の場合は症状の進行を抑えつつ、対症療法を行っていくことになります。

 また、神経障害は糖尿病足病変を併発しやすく注意が必要です。足病変とは足に関する様々なトラブル全般のことです。神経障害により痛みに鈍化していると水虫や傷口の化膿といった足のトラブルに気付きにくく重篤化しやすいです。さらに糖尿病が長期にわたると動脈硬化が進行し、血流が障害されます。そうすると足の末梢に必要な栄養や酸素がいきわたりにくくなり、さらに進行すると血管が完全に閉塞してしまい組織が死んでしまいます。神経障害があるとそのことに気付きにくくなるため、足病変に特に注意が必要なのです。よく糖尿病で足を切断することになってしまったなんてことを耳にすることがあるかと思いますが、こういうことだったのです。神経障害の合併症のある糖尿病の方は足のケアをしっかり行いましょう。

「網膜症」

 網膜とは眼に入ってきた光を電気信号に変換して脳へ繋がる視神経に伝達する組織です。網膜にはとても細い血管が広がっていて栄養や酸素を組織全体にいきわたらせています。

 糖尿病が長期にわたると血流障害が生じます。血中にブドウ糖が増えすぎる活性酸素が生じ、この活性酸素が血管を傷つけてしまうためです。また、血中の多すぎる糖はタンパク質を変性してしまうと考えられておりこれも血流障害の一助になっているとされています。血流障害は細い血管ほど影響を受けやすいです。そのため、細い血管を持つ網膜は血流障害が起こりやすく網膜症となってしまうのです。網膜症が進行すると網膜出血や網膜剥離などが起こり、視力の低下や失明の原因となります。

 糖尿病網膜症は日本人の失明の原因の2位とされています。一方で糖尿病患者さんが重傷の網膜症を合併している割合は減少傾向にあります。これは治療と薬剤の進歩により血糖コントロールが改善したことや網膜症の検査による早期発見が増えたことによると考えられています。

 視力低下といった自覚症状は、網膜症が進行しないと現れない症状とされています。そのため、糖尿病の患者さんは網膜症の診断をされていなくても、年に1回は網膜症の検査をされることが推奨されています。網膜症の早期発見ができれば、適切な治療により重症化を予防することができます。また、網膜症でなくとも糖尿病の方は網膜症にならないように血糖コントロールをしっかり行いましょう。

「腎症」

 腎臓は体内の老廃物や過剰な塩分や水分を体外に排出し、体液を一定に保っています。またいくつかのホルモンを産生し、身体の恒常性の維持に貢献しています。

 高血糖の状態が長期にわたると腎臓が傷みます。高血糖状態が続くと組織のたんぱく質に血液中のブドウ糖が結合した物質が増え全身の小さな血管を傷つけてしまいます。腎臓の濾過装置である糸球体は細い血管が多いのでこれが起こりやすく腎臓が傷み、糖尿病腎症となるわけです。糖尿病腎症の初期はほとんど症状がありません。しかし、前述した腎臓の機能が低下し様々な身体の不調を引き起こします。進行するとむくみ、貧血、高血圧といった症状が現れます。さらに悪化してしまうと体内の老廃物を取り除くために人工透析が必要となってしまいます。糖尿病腎症は人工透析の原因の1位で、糖尿病の患者が増加傾向にある日本では毎年1万人以上の患者さんが人工透析を始めることとなってしまっています。

 以上、糖尿病の3代合併症について簡単に説明いたしました。いかがでしょうか。糖尿病は恐ろしい病気だということが少しでも伝えられたなら幸いです。
 戦後、食の欧米化に伴い日本では糖尿病患者が増加し、現在も増加傾向にあります。とても身近な病気です。理解し、予防し、付き合っていく、その意識が大切ではないでしょうか。